かさの家 梅ケ枝餅

昔、新幹線が運転見合わせで帰れなくなってしまった。動き出すかなと待っている時間に、自由席で隣合わせたおじさんと何気ない話になった。そのおじさんは最近親族を亡くされ、福岡太宰府近くに墓を作ったとの話。新しく出来た墓の写真を見せてくれた。確か墓石に夢と描かれていた。

これも何かの縁だからと、おじさんはお土産に買ってきた、かさの家の梅ヶ枝餅を振る舞ってくれただけで無く、お土産に一箱よこしてくれた。気持ちだけ受け取りますと、ご遠慮したが一向に引かない。私もそれならば、ありがとうとお礼を伝え頂きました。あの時の梅ヶ枝餅の素朴な味わいは、おじさんの親切さと一緒に思い出す。薄皮がバリっとした餅と粒あんの甘さが合わさり、絶妙な味わいだった。帰りにお返しにビールを渡して乾杯した。梅ヶ枝餅を食べるとあの時の味と、人のやさしさが心に沁みた記憶が蘇る。私にとって忘れられない味の一つである。

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